群馬県蚕糸技術センターの下田みさとです。
私は2007年に信州大学繊維学部へ入学し,運よく学問として蚕を学ぶことができました。また,祖父母が養蚕農家であったことや,地元がかつて日本一の繭生産量を誇る村であったことを知り,「蚕を学んだ自分は養蚕農家のために働かなくては」という勝手な使命感から,現在,蚕糸技術センターで働いています。
蚕糸技術センターでは,群馬オリジナル蚕品種の原種1)の維持を担当しています。簡単に言うと,蚕の原種を飼育し,継代するために卵を採る業務を行なっています。ポイントは私が扱う原種は群馬県の養蚕農家で飼育される品種の大元であるというところです。群馬県の蚕糸業の根本となる原種を扱うという責任があるため,飼育する全ての蚕について飼育成績や繰糸成績を調査し,品種の特徴が維持できているかを確認しています。
また,蚕品種の育成についても担当しており,令和元年に暑さに強い蚕品種「なつこ」を育成しました。群馬県の繭生産量は日本一ですが,近年,夏の暑さが養蚕に大きな影響を及ぼしています。この問題に対処すべく,蚕糸技術センターでは初秋蚕期に「なつこ」を農家へ供給し,農家で生産される繭の量と質の維持に努めています。
私の仕事は基本的にセンター内で完結することが多いのですが,「なつこ」の普及に伴い,稚蚕共同飼育所や農家,そして製糸会社といった現場を訪ねる機会も増えました。現場で直接話を伺うことで,改めて蚕糸業の川上2)にいる自分には何ができるかを考えさせられ,群馬の蚕糸業に携われる楽しさと責任をもって仕事に取り組むことができています。
勝手な使命感から蚕糸業に足を踏み入れましたが,知れば知るほど奥深く,どんどん蚕の沼にはまっています。蚕糸業の世界ではまだまだペーペーの私ですが,3センスlab.の活動を通じて,この沼の深さを誰かに伝えることができたら嬉しいです。
原種1);交雑種の親となる品種
川上2);蚕糸業の蚕種製造~養蚕~製糸の流れにおいて上流であること
蚕糸技術センター;https://www.pref.gunma.jp/page/20747.html